蜜月同棲~24時間独占されています~


はっきりいって、再会してからこれまでのことをどれだけ思い出しても、こうなるように彼に仕向けられたとしか、今となっては思えないけれど。


彼の私への気遣いは本物だから、少しの恨み言も冗談でも出てこない。


「……最近、篠宮も機嫌がいいんですよね」

「え、そう、なんですか」

「もしかして一線……」

「あー! あー、あー……そういえば篠宮社長は? あ、コーヒーでも淹れましょうか」


一線超えた、とか際どい質問が来そうで、言葉を遮って話を逸らした。


「今はいい。篠宮は外出してる」

「え、そうなんですか」


パソコンに齧りついてたからか、全然気が付かなかった。
プレジデントルームからはオフィスのフロアを通らなければ、外に出られないはずだけれど。


「最近、なんか忙しそうですね」

「あー……ちょっとね」


深見さんが、はっきりとは言わずに口籠った。


「え、なんですか?」

「ちょっと、星和堂に呼び出されてる」


星和堂。
克己くんの実家の会社だ。
いずれは後を継ぐという話だけれど、まだそんな話は聞いたことがなかったから当面先のことのはずだ。
だとしたら何の用だろう、と首を傾げた時、今まで自分の仕事に集中していた磯原さんが、ぱっとパソコンの影から顔を出した。

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