蜜月同棲~24時間独占されています~
「えー、もしかして社長、そろそろ星和堂に戻されるの?」
磯原さんがやけに確信めいた声を出す。
「えっ? そうなんですか?」
「三十歳になるまでには戻らないといけないって元からそういう話だったらしいからね、それは皆知ってるの」
「そうだったんですか……」
私は聞いたことのない話だった。
克己くんは今二十八歳だ。
まだ二年あるけれど、三十がリミットという意味なら、いつそんな話が持ち上がっても不思議はない。
ただ、何かすっきりしないのは……克己くんがそのことについて、私がここにバイトし始めた後も一度も触れていないことだ。
その上で、ここで働けばいいと何度も言っていた。
克己くんが本社に戻ったら、私はどうしたらいいんだろう。
ここにいてもいいのだろうか?
無関係なことではないのに、どうしてひとことも言ってくれないのだろう。
「篠宮社長が居なくなったら、後は深見さんが?」
「そうなるな」
「えー。大丈夫です?」
「どういう意味だ?」
磯原さんと深見さんのじゃれあいに笑いながら、心にずっと何か引っかかっていた。