蜜月同棲~24時間独占されています~

さやかの話を聞く限り、どうやら私は昨夜克己くんからの電話に自分で出たらしい。
電話で散々泣きつき、放っておけないからと克己くんが店まで迎えに来てくれて、その頃にはテーブルに突っ伏していつ寝てもおかしくない状況だったそうな。


「ほ……ほんとに?」


社ビル屋上のベンチで、さやかの話を聞きながら昼食のお弁当を食べ終えて、私は頭を抱えた。
ここは落下防止のフェンスで安全を確保され、ベンチや花壇が並ぶ社員の為の憩いのスペースになっている。気候の良い時期の晴れた日などは人気があるが、二月のこの時期は閑散としていた。


当然だ、今はまだ二月の真冬真っ盛り。
だけど、あまり聞かれたくない話をするにはちょうどよく、幸い今日は天気も良くて風もなかった。


「ほんとになんにも覚えてないの? かけらも?」

「まったく……」


というか、信じられなかった。幼馴染の克己くんとは、本当にずっと連絡も取っていなくて、電話番号が高校生の頃から変わっていないのだということも昨日の電話でわかったくらいだ。どうして今頃になって連絡があったのか、嬉しいけれど驚きの方が強い。


「柚香の結婚の破談を心配してかけてきたみたいだったわよ。そのことを事前に連絡したんじゃないの?」

「ううん、してない。でも、耳に入ったのかも……」

「名刺ももらったし、あんたも間違いなく彼に懐いてたから任せて大丈夫だろうと思って、私は帰ったんだけどね」


心当たりがあるといえば、私の母だ。

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