蜜月同棲~24時間独占されています~
もしも、克己くんの想い人がお姉ちゃんだったら?
克己くんの笑顔が、少し照れたようなものだった。
それが、ずきんと痛みに追い打ちをかける。
ネガティブに考えすぎだ。
でも、信じてた新田さんだって私に隠しごとをしてた、その挙句綾奈が妊娠して。
克己くんだって。
いや違う、自分一人で考えて思いこんでしまったらだめだ。
……じゃあ、なんで私に黙って会ってるの?
嫌な憶測が頭に浮かぶたび、打ち消す冷静な自分はちゃんといる。
ちゃんといる、けれど。
「ちょっ……柚香ちゃん!? どうかしたの!?」
置いて行かれた、子供の頃の感覚を思い出して、寂しくなった。
そして、姉に対する嫉妬の感情が渦巻いて止まらなかった。
ハラハラハラ、と涙が零れた私に驚いて、磯原さんの大きな声が響く。
その声が届いたのだろう。
克己くんがこっちを見て、驚いた顔をした。
ゆっくりと振り向く姉と目が合うのが怖くなって。
私は、ぱっと踵を返して、全速力で駆けだした。
「柚香!?」
角を曲がって路地に逃げ込む少し前、克己くんの声が聞こえた気がした。