蜜月同棲~24時間独占されています~
花嫁は信じたい
走って走って走って、何も考えずにあちこちに路地を曲がりまくった。
感情が爆発して、泣いてしまった自分が情けなくて恥ずかしくて、とにかく今はこの顔を誰にも見られたくなかったのだ。
辿り着いたのは、どこかの公園のベンチだ。
学生の頃以来じゃないだろうか、全力疾走していつのまにか涙よりも息切れの方が大変だった。
「……どう、しよ」
逃げてしまった。
磯原さんも克己くんもお姉ちゃんも、絶対変に思った。
さんざ走って泣いて、それでいくらか頭に冷静さが戻ったらしい。
よくよく考えてみれば、いくらなんでも克己くんがお姉ちゃんを好きだったとしたら、私を代わりになんてそんな酷いことするはずがない。
そんな突飛なこと、あるわけがないと思う。
だけど、どうしてふたりで会っていたのだろう?
それに、会社のこともどうして黙ったままだったんだろう。
このまま、今の会社に私が就職してしまえば、遠い場所ではないにせよ同じ会社では働けなくなることになる。
わからないことが重なって、尚且つふたりでカフェに座っている姿が、新田さんから綾奈の妊娠を聞かされた時の光景にダブって見えた。
だが、だからといって。
「だからって、泣いて逃げるのはだめだ……」
せめて気付かなかったフリでもして通り過ぎられれば良かったのに。
あんな風に見られていては、当然心配をかけまくったうえに、あとでどうして泣いたのか説明させられてしまう。
お姉ちゃんに嫉妬したなんて、なさけなくて言えない。