蜜月同棲~24時間独占されています~
ああ、やだ。
みっともない。
でも口に出せて、すっきりはした。
俯いたまま、ずずっと鼻を鳴らして顔を上げられずにいると、ふうっと溜息が落ちて来た。
ずきん、と心が痛む。
けれど、次に聞こえた克己くんの声は、とても優しいものだった。
「……ゆず。靴脱いで」
「え?」
「とりあえず、中に入ろう」
腕を掴んでいた手を滑らせて、私の手を握る。
言われるままに脱ぐと、手を引かれて廊下をリビングの方へと歩く。
とぼとぼ、と言った表現がぴったりはまりそうな私の歩幅に、焦ることなくゆっくりと彼も合わせてくれている。
リビングのソファまで来た時、彼が先に腰かけて、正面に私を立たせ彼の膝の間まで引き寄せる。
そうして私の両手をぎゅっと握りしめた。
「……まず、会社のことだけど」
「うん」
「来年の春には、俺は星和堂に戻って後を継ぐ準備をしないといけない」
ゆっくりと、言い含めるような声。
目は少しもブレず私を真直ぐに見つめていた。
「言わなかったのは、今は柚香には自分のことだけ考えていて欲しかった。俺たちふたりのことだけを。それに、働くなら俺と一緒に星和堂に来るよりも今の会社の人間の方が信用できる」
みっともない。
でも口に出せて、すっきりはした。
俯いたまま、ずずっと鼻を鳴らして顔を上げられずにいると、ふうっと溜息が落ちて来た。
ずきん、と心が痛む。
けれど、次に聞こえた克己くんの声は、とても優しいものだった。
「……ゆず。靴脱いで」
「え?」
「とりあえず、中に入ろう」
腕を掴んでいた手を滑らせて、私の手を握る。
言われるままに脱ぐと、手を引かれて廊下をリビングの方へと歩く。
とぼとぼ、と言った表現がぴったりはまりそうな私の歩幅に、焦ることなくゆっくりと彼も合わせてくれている。
リビングのソファまで来た時、彼が先に腰かけて、正面に私を立たせ彼の膝の間まで引き寄せる。
そうして私の両手をぎゅっと握りしめた。
「……まず、会社のことだけど」
「うん」
「来年の春には、俺は星和堂に戻って後を継ぐ準備をしないといけない」
ゆっくりと、言い含めるような声。
目は少しもブレず私を真直ぐに見つめていた。
「言わなかったのは、今は柚香には自分のことだけ考えていて欲しかった。俺たちふたりのことだけを。それに、働くなら俺と一緒に星和堂に来るよりも今の会社の人間の方が信用できる」