蜜月同棲~24時間独占されています~
母からおば様に、そしておば様からひとり息子の克己くんの耳に入ったのだろう。つまり、克己くんは星和堂の御曹司なのだが。
「すごいよね。名刺の肩書がpresidentって。社長ってことだよね」
克己くんからもらったらしい名刺を、さやかが私に向かって差し出した。
《president篠宮克己》と書かれてあるが社名は星和堂ではない、知らない会社だった。大学を卒業してから起業した、と聞いていたがそれは本当だったらしい。
「ねえ……」
「なに?」
「克己くん、どんなだった?」
ああ。どうして私は欠片も覚えていないのだろう。そして、一体どんな醜態を晒したのだろう、と恐々彼女に尋ねたら、またしてもにやあっと嬉しそうに笑われた。
「すっごく、かっこよかった。感じも悪くなかった」
「そ、そか……今もかっこいいんだ」
「もしかして昔好きだったとか?」
「……ちょっと」
正直に吐くと、やっぱりねと言うように彼女は二度三度頷いた。
「見ててわかった。あんたすっごい甘えてたし」
「うそっ? いや、でも、好きだったのは昔の話だからね!」
「ほんとに?」
それは本当のことだ。ここ数年は思い出すのも稀だったし、私にはちゃんと新田さんという恋人がいたのだから。
疑わし気なさやかの視線に反論しようとした時だった。胸ポケットにいれていたスマホが着信を知らせて鳴った。
「えっ!」
着信表示に出ている名前に、驚いて落としそうになる。こちらから、昨夜のことを聞くためにも、家まで多分送ってくれたのだろうためにも連絡しなければ、とは思っていたのに。
「か、克己くんだ……」
向こうからかけてきてくれるとは思わなかった。
「すごいよね。名刺の肩書がpresidentって。社長ってことだよね」
克己くんからもらったらしい名刺を、さやかが私に向かって差し出した。
《president篠宮克己》と書かれてあるが社名は星和堂ではない、知らない会社だった。大学を卒業してから起業した、と聞いていたがそれは本当だったらしい。
「ねえ……」
「なに?」
「克己くん、どんなだった?」
ああ。どうして私は欠片も覚えていないのだろう。そして、一体どんな醜態を晒したのだろう、と恐々彼女に尋ねたら、またしてもにやあっと嬉しそうに笑われた。
「すっごく、かっこよかった。感じも悪くなかった」
「そ、そか……今もかっこいいんだ」
「もしかして昔好きだったとか?」
「……ちょっと」
正直に吐くと、やっぱりねと言うように彼女は二度三度頷いた。
「見ててわかった。あんたすっごい甘えてたし」
「うそっ? いや、でも、好きだったのは昔の話だからね!」
「ほんとに?」
それは本当のことだ。ここ数年は思い出すのも稀だったし、私にはちゃんと新田さんという恋人がいたのだから。
疑わし気なさやかの視線に反論しようとした時だった。胸ポケットにいれていたスマホが着信を知らせて鳴った。
「えっ!」
着信表示に出ている名前に、驚いて落としそうになる。こちらから、昨夜のことを聞くためにも、家まで多分送ってくれたのだろうためにも連絡しなければ、とは思っていたのに。
「か、克己くんだ……」
向こうからかけてきてくれるとは思わなかった。