蜜月同棲~24時間独占されています~
「プロポーズ、ちゃんとしてなかったなと思って」
「克己くんっ……」
「まあ、嫌だとは、言わせないけど」
台座から指輪を外すと、彼は箱をローテーブルに置いた。
それから再び私の左手を持ち上げて、薬指の先に指輪を当てる。
「絶対手放さない。俺の妻にすると決めてる」
私に、許可は得なかった。
当然のように、薬指にゆっくりと指輪を通した。
金属の感触が指の関節を過ぎ、付け根まで辿り着く。
「もう、逃げられないってわかっただろ」
そう言った彼の表情は、不遜で艶やか。
ああ。
彼は、もうとっくに私の気持ちがどこにあるのかなんてわかっているのだ。
「だからそろそろ、白状しろよ」
潤む視界で、彼が得意げに微笑む。
涙が堪えられなくて、戦慄いた唇を隠そうと手で覆った。
けれど、それは許されなくて両手はそれぞれ彼の手に拘束されて、私が気持ちを言うまで離してくれそうにない。
「い……急がないって言ったくせに」
「そのつもりだったけど。あんな可愛いヤキモチ妬かれたら、ちょっとくらい急かしたくもなる」
恨めし気に睨む私の目尻にキスをして、彼は私の表情をじっと見つめる。
しん、と静かになった。そして、催促するように次は瞼に。
「……ゆず」
「……すき」
蚊の泣くような、小さな声だった。