蜜月同棲~24時間独占されています~
社内恋愛が、拗れるとこんな大変なことになるのか、と身をもって実感中だ。
「とにかく、本当に結婚してしまう前で良かった。そんなクズの為に人生棒に振るな」
「うん……」
克己くんは、本気で怒っているようだった。
別に私だってのほほんとしているわけじゃあないのだけれど、散々泣いて泣いて、それでもまだ裏切られた痛みは鈍く胸を蝕んでいる。
ぶつけそこなった怒りだとかもある。
彼が私の目の前で綾奈を気遣ったことで、感情をぶつけるよりも私はその場を逃げ出してしまった。
ふたりの姿を視界に映し続けることが、出来なかったのだ。
だけど、さやかも克己くんも、まるで自分のことのように怒ってくれている。
それがいくらか、私の心を楽にした。
「ありがと、克己くん」
「何が」
「私のことでこんなに怒ってくれるとは思わなかったから」
何年も会っていなかったら、ほぼ他人のようなものだと思っていた。
私にとっては彼は初恋の人だから少し特別だけれど、彼からすれば私は単なる幼馴染にすぎないはずだ。
だけどそうじゃなかった。
「当たり前だ。俺に取ったら大事な『妹』なんだよ、お前は」