蜜月同棲~24時間独占されています~
個室で声を殺して泣いて、十分程だろうか。
多少発散出来たのか、胸が締め付けられるような苦しさが少し楽になって、なんとか涙も止まった。
そうすると少し冷静になり、早く仕事に戻らなければと気が付いた。
いつまでもオフィスに居なければ、変に思われてしまう。
深呼吸をして、トイレ内に人の話し声や物音がしないことを確かめてから個室を出た。
洗面所で手を洗って、ふと顔を上げた時、鏡に映った自分の顔色の悪さに驚いた。
「……酷い顔」
憔悴しきった自分の顔が、この数週間で酷く老けたような気がした。
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弱り目に祟り目、という。
決まらない住処と新田さんとの出来事に日々不安が拭えず疲弊していたところに、急に人事に呼び出された。
「え……自主退職?」
人事部の小さなミーティングルームで、人の良さそうな人事部のおじさんが申し訳なさそうに眉尻を下げている。
人件費削減という施策実施に伴い、自主退職者を募っているのだという。
恐らくは、経営状況があまり良くないのだろうとそれくらいの察しはつく。
けれど、なぜ私に白羽の矢が当たったのか。
「な、なんで私なんですか」
ショックで声が震えた。
「いや、君だけじゃないんだよ。何人かピックアップしてこちらから順に声をかけているだけで、うん、絶対ということじゃない」
「だから、どうして私……」
いくらなんでも、酷くないだろうか。
寿退社を勧められるというならまだわかる。
だけど、結婚が破談になったことは当然人事も把握してるんじゃないだろうか。