蜜月同棲~24時間独占されています~
「私、働き口がなくなるのは困ります」
「もちろん、再就職先は出来る限り斡旋することになってるよ。それに、退職金も今なら少し上乗せされることになってて、計算式があるんだけどね……」
ぴら、ぴら。
と資料を二枚渡されて、見ればこれまでの積み立ての年数や金額と計算式が2パターン書かれていた。
それを指差しながら、丁寧に説明してくれるのだけどちっとも頭に入ってこない。
「……どうして私なんですか。私、真面目に働いてきたつもりです」
衝撃で声が震えていた。
自分が候補者に挙げられたということは、つまり会社にとって不要な人材だと言われたも同じなのだから。
遅刻もしたことないし、欠勤したのもインフルエンザにかかった時だけのはずだ。
なのにどうして、という気持ちが拭えない。能力がなかったとみなされてしまったのだろうか。
この人を責めても仕方ないことはわかっている。
彼も、はあ、と思い溜息を吐いて、眉を八の字にし眼鏡の縁をくいっと持ち上げた。
「……君が悪いんじゃないよ。だけど会社は退職者を募らなければならない。長く勤めてくれて、再就職の出来る年齢じゃない者を挙げるのは酷だし、家庭を持つ男性社員も同じだ。君は最初から候補に入っててね……その、結婚の予定があっただろう」
「それは……! でも、なくなってしまいましたし」
つまり、結婚退職を促す予定で私は候補に挙がっていたのだ。
だけど、その話はなくなったとわかっているのに、どうしてまだ私は外してもらえないのだろう。
「君なら、再就職の可能性もあるし……その、新田くんといつまでも同じ部署で働くのは、無理があるだろう。部署の空気も微妙なままだと聞いてるしね」