蜜月同棲~24時間独占されています~
「そんなに稼いじゃいないんだけどな。社長なんだからそれなりのところに住まないとかっこが付かないって副社長がさ」
「副社長?」
「大学の同期。一緒に会社起こしたヤツで、上下関係ってより友人」
「そうなんだ……」
やっぱり私にはちょっと、想像が付き難い世界だ。
だって私が大学生の頃にも社会に出てからも、自分で会社を作ろうなんて発想はまったくなかった。
手渡された黒のマグカップには、ほかほかとして手のひらからじんと温もりが身体に広がる。
色ではわかりづらかったけれど、淹れてくれたのは紅茶でひとくちすするとほんのりと甘かった。
「あ。つい昔のままの印象で砂糖入れたけど、良かったか」
「うん。変わってないよ」
「そうか」
そう言って彼も自分のカップを手に、私の斜め横のソファに座った。
「……で。今、どういう状況?」
そうしてまた、折角和らいでいた空気がぴりりと引き締まった。