蜜月同棲~24時間独占されています~
慌てて両手のひらを克己くんに向け、制止した。
そこで彼は一度止まってくれたのだけど、きょとんとして私が戸惑っている理由がわかっていないみたいだった。


「あの……待って。まだ月末まで時間があるし、住むところも仕事もちゃんと探すよ」

「なんで。はっきりいって顔色悪いし、黙って見てられる状態じゃないんだけど」

「でも、そこまで頼りきっちゃうわけにいかないもん」


私の言葉に、克己くんが難しい顔をした。
だけど、何も努力する前からそこまで全部お世話になって良いはずがない。


「……わかった。けど、仕事は今月中に見つからなかったら、俺の言う通りにすること」

「えっ?」

「それは約束して。大事な幼馴染を路頭に迷わせるなんてことはできない。それと、住むとこは俺が用意する」

「や、でもっ」

「急場の措置。気に入らなければ、後でゆっくり自分で探せばいい。その方が職探しに専念できるだろ」


……確かに、それはそのとおりだ。
一旦でも住む場所が決まっていれば、随分気が楽になる。


それに、あれもこれもと克己くんの好意を全部断るのも、失礼だと思った。
何より意地を張っている場合でもない。


そう思い至ると、ここは素直にならなければと克己くんに向かって私は頷いていた。


「……ありがとう。すごく、助かる」


すると、彼の表情が安堵したかのように緩む。
強引で驚いたけれど、心底心配してくれているのは確かだ。


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