蜜月同棲~24時間独占されています~
あんまりにも克己くんが何でもないことのように言うものだから、ふうん、そっか、と頷き聞き流してしまいそうになる。
一拍の間を置いて、私は多分間抜けな顔をしていただろう。


「……え?」

「俺んとこにもこないだ、見合いしろって連絡あった。母親から」

「え、まさか。……別々の話じゃないの?」

「今までそんなこと言ってきたことないのに、なんかやたら浮かれてたから変だなと思ってたんだよ。多分間違いない。母親同士で盛り上がってんだろきっと」


私の母と、克己くんのとこのおば様はとても仲良しだ。ふたりで盛り上がるシーンが確かに目に浮かぶようではあるが。


「え、ええええっ!」


あのふたりの結託ならば、そう簡単には覆りそうにない。
それに私も勿論そんな気にはなれないけれど、一番困るのは、目の前の克己くんだ。


克己くんなんて選り取り見取りのはずなのに、どうして私みたいなのとお見合いさせようなんて思うのだろう。


「心配しなくても、俺も適当にしか返事してない」


つい大きな声を出してしまった私に、彼は苦笑いを浮かべた。


「そうじゃなくて……ごめん。なんか私のせいで迷惑ばっかりで……」

「柚香のせいじゃないだろ。とりあえず盛り上がらせておけばそのうち飽きるだろうし、俺の方から白紙に戻るように上手くもってくから、柚香は適当に話合わせとけばいい」


当然、克己くんにとってそんなお見合い話は迷惑でしかないんだろう。
頭の中で、穏便にこの話をなかったことにする段取りは出来ているようで、少し安心する。


と、同時にちょっと寂しいのは、やっぱり克己くんにとって私って妹か幼馴染でしかないんだなあとわかったことだ。
初恋のほろ苦さが、克己くんの優しい笑顔と一緒に想い出の中から掘り出されたような気がした。


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