蜜月同棲~24時間独占されています~
逃げるようにカフェを出て、早歩きで道を過ぎる。
何処をどう歩いたのか、実のところよく覚えていない。


ただずっと、新田さんと綾奈の姿が頭から離れなかった。
昨日、オフィスでいつもと変わりなく言葉を交わしていたのだ。


綾奈とも、新田さんとも、だ。
ふたりはそんなに前から、私の知らないところで繋がり私を陰で笑っていたのだろうか。


親や姉には、何て説明をすればいいだろう。
それだけでなく、招待している親戚友人にも連絡して回らなければならない。


仕事だってそうだ。明日からどんな顔をして出勤すればいいのやら、考えただけで気が重い。
直属の上司にはふたりで報告しなければならないだろうけど、説明は全部新田さんに任せよう。


なんていうつもりだろ……って、赤ちゃんいるんだから誤魔化してもすぐに露見する。
ありのままを話すしかないだろうな。


独り暮らしをしているワンルームマンションの玄関に辿り着き、鍵を開ける。
そうだ、ここも来月には出なくちゃいけないのだ……新田さんと一緒に住む予定で解約手続きをしてしまっている。


俯いたままふらふらと部屋に上がって、ベッドの上にどすんと腰を下ろした時だ。
正面壁際の足元に、真っ白いレースの塊を見つけて思考回路が停止した。

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