蜜月同棲~24時間独占されています~
引越し作業まで付き合ってくれるつもりらしい彼に、とんでもないと頭を振った。
その拍子に、私の頭を撫でていた手も離れていく。
「いくらなんでもそこまで頼めないってば! 住む場所準備してくれるだけで充分で、後は自分でなんとかするから」
「引越しの手伝いくらい大したことない。鍵も当日渡すから」
「それって、克己くんの会社の社宅みたいなとこ? 本当に私住まわせてもらっていいの?」
「一から探して欲しいなら、そうするけど。この時期だし、ひとり暮らしするにはちょっと広すぎるかランク高いところしか空いてないと思うよ」
「うっ……それは」
「困るだろ。それに、柚香の仕事が決まらなければうちで働くことになるんだし、その時に手間が省けていい」
言い方は優しいし穏やかだけれど、既に決定事項の物言いだ。
こういう言い方でもしないと、私が遠慮して頼らないと思っているからなのかもしれない。
そう思うと、気ばかり使わせている気がして、私は大人しく頷く他なかった。
すると彼もまた、満足げに頷く。
「……じゃあ、決まりな。あまり思いつめないで、ゆっくり休めよ」
「うん……ありがとう」
再び髪を撫でた手に、今は素直に助けてもらうことにした。