蜜月同棲~24時間独占されています~
それから克己くんと一緒に不動産屋に鍵を返しに行くまでは、良かった。
私はなぜか再び、克己くんのマンションの中にいる。
「克己くんっ? 社員寮って話じゃあ……」
「それが、深見がさすがにそれはマズいって言い出してさ、社員寮っても借り上げなんだけど」
「深見さん?」
「あ、うちの副社長」
大学の友人で、起業した仲間だと言ってた人のことだ。
「雇用するならいいけど、まだそれも未確定で借り上げは出来ないって言うから仕方なく」
「仕方なく?」
「しばらくここに住めばいい」
「え……ええっ!?」
驚いている間にも、着々とトラックから運び込まれる衣類や日用品が詰め込まれた段ボール箱。
「ちょ、ちょっと待って、私そんなの聞いてないし!」
「ああ、ごめん。忙しくて連絡するのが遅れて」
「遅れて、って、当日……」
「家具はあるし、柚香のは一旦貸倉庫に預けとくから」
なるほど、それでトラックが二台来ていたのか、と納得する。
最初から、貸倉庫行きとこのマンション行きとに分けて荷積みしていたのだろう。
「そんな、無理なら言ってくれたら自分でなんとかしたのに……」
「自分でどうにもならなかったからこの状況なんだろ」
「そっ……そうなんだけどっ……」
それならそれで、言ってくれたらいいのに。
ここに来るまで黙ってるって、わざとなんじゃないかと思ってしまう。