蜜月同棲~24時間独占されています~
「えっ」
腰を抱かれるような形になって、驚いて心臓が飛び跳ねる。
顔を上げると克己くんの顔がすぐ間近にあり、慌てて俯いた。
頭の中でクエスチョンマークを飛ばしながら、顔を赤くしているその間も、克己くんは離してくれない。
「すみません」
と克己くんが頭を下げたのは、私の後ろを横切ろうとカートを押していた年配の女性だった。
どうやら、私が通行の邪魔になっていたらしい。
それならそうと言ってくれればよいのに、と思いながら私も慌てて会釈した。
「すみません、気付かなくて」
「いいえぇ。仲が良いですね、新婚さん?」
「えっ、いえ、そうでは……」
返事は別に必要としていないらしい。
ふふふ、と上品に口元を手で抑えながら、私の弁解も聞かずにカートを押しながら去っていく。
激しく勘違いをされている。
「ご、誤解されちゃった」
「いいだろ別に。ほら、コンソメ」
腰に回された手が今度は私のすぐ真横の棚に手を伸ばし、コンソメの箱を手に取った。
身体はもう解放されたのだけど、なんとなく近く感じる距離感だった。