蜜月同棲~24時間独占されています~
「覚えてないだけじゃない? 子供のときとは違うし」


ごく当たり前の主張なのに、なんだか私の方がわがままを言ってるような気になってくる。
あんまり克己くんがナチュラルに、一緒に寝ようというスタンスで話をしてくるからだ。


「どっちにしろイビキくらいじゃ起きないから、心配ない」

「いやっ、心配とかじゃなく!」

「俺の安眠まで気にしてくれるなんて、柚香は優しいな」


至近距離に迫られたままにっこりと邪気もなく微笑まれ、抵抗する気力も失われた私はひくっと頬をひきつらせ。


「……わかった。ここで寝る」


それ以上の問答はもう無意味におもえて、仕方なく了承した。


ここまで克己くんが私を意識しないなら、私の方も気にしなければいい。
それだけのことだ。


すでに私も克己くんもパジャマ姿で寝る準備は万端だ。
克己くんは黒いパジャマでなんだかそれだけで色気たっぷりなんだけど。


いけない。
気にしたら眠れなくなりそうだ。


どくどくどく、と鼓動も早い。
ベッドに腰かけたまま緊張する私をよそに、克己くんはあくまで普段どおりだった。


「柚香、疲れてるだろうから。ゆっくり眠れよ」


ぽんっと私の頭を叩いてから、真横を通り私が据わるところとは反対側からベッドに上がる。


「ドア側と窓側、どっちがいい?」

「あ、別にどっちでも」

「じゃあ、俺こっちな」


と、彼はベッドの窓側半分のスペースを陣取り、背を向けて寝転がった。


おそるおそる、私も掛け布団をめくる。

< 75 / 200 >

この作品をシェア

pagetop