蜜月同棲~24時間独占されています~
「ああ、そうだ。今日、母親から連絡があった」
ラフな部屋着に着替えた克己くんが、テーブルの向い側でカレイの煮つけの身を箸で上手に解している。
お箸の使い方がとても綺麗だ。
「克己くんのお母さんから?」
「そう。お見合いのことで」
ぎく、と頬が強張る。
克己くんがお見合い相手じゃないかという話をしたあの時から、私たちの間であまりその話題には触れていなかった。
ただ、克己くんが実家に「あまり急かさないでくれ」とだけ伝えてくれているようで、多分それが私の母にも届いているのだろう。
母からのメッセージにもお見合いの件には触れておらず、ただ心配するような内容だけになっている。
喧嘩したみたいに電話を切ってしまったから少し気まずく、通話もかかってきているけれどそれには出ていない。
簡単にメッセージだけを返信していて、引っ越したこともまだ伝えられていなかった。
引越し先がまさかのお見合い相手のところだなんて、言えるわけがない。
「な、何か言ってた?」
「ん、まあ、一度みんなで食事しないかって」
「……それって結局お見合いってことだよね」
仲良し一家が久々に集って食事をするだけのことだとも言えるけれど、母親たちの思惑を考えれば意味合い的には間違いなくお見合いだろう。