蜜月同棲~24時間独占されています~


克己くん曰く、デート。


それはとても楽しかった。
水族館は人が多かったけれど、一度団体客の波に押されてはぐれそうになり、慌てて手を繋いだ。


それからはずっと、繋いだままだ。
道行く人の目に克己くんが映るのがわかる。


そっと後ろを振り向くと、通り過ぎた後も克己くんを目で追っていたりする人もいた。


……かっこいいもんなあ。


薄暗い館内で、水槽からのライトに照らされ陰影の浮かぶ克己くんの顔はとても綺麗だ。
じっと見つめてしまっていて、気付いた克己くんとばちっと目が合った。


私は慌てて、大水槽に目を向ける。
白い砂が敷き詰められた大きな水槽の中を、大小様々な魚が遊泳している。


南国の海を切り取ったような水槽だった。


「ゆったりしてて、気持ちよさそう」


大きなエイが優雅に旋回しながら、その周りを小さな魚がついてまわる。


「あれ、なんか克己くんみたい」

「は? なんで」

「ボスって感じ。いっつも人に囲まれて、慕われて頼られてる感じ」


学生の頃から、そんなイメージだった。


「そうか? そんなこともないけどな」


いつも人の中心にいる人は、意識もしてないものなのかもしれない。
あのエイの周囲のちっこい魚の中に私が居たのだ、昔は。


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