蜜月同棲~24時間独占されています~
「柚香はアレだな」
大水槽から離れて、少し歩いたとき。
克己くんが指差したのは、水中トンネルの中だった。
ふよふよと、指差した場所に漂っているのは、ライトアップされたクラゲだった。
「え、ええー。そうかなあ」
可愛いしクラゲは好きだけれど、クラゲみたいだと言われるとちょっと不本意というか。
ふわふわと、地に足のつかない感じだと言われたような気になってしまう。
「私そんなふわふわして頼りなさそう?」
「そうじゃなくて。ふわふわゆるゆる、幸せそうに漂ってんのが似合いそう」
「ええー……」
それでも何か、納得がいかなくて唇を尖らせてクラゲを目で追いながら進んでいく。
ぽそっと呟かれた言葉にまた、どきりとさせられた。
「くだらないことに悩まされずふわふわ笑ってられるように、守ってやれる場所になんでいなかったんだろうな」
意味を含んだセリフに、怖いようなせつないような複雑な感情に襲われ、俯いた。
繋がれた手に、ぎゅっと強く力が籠る。
どうして、そんなことばっかり言うの、今日は。
彼の言葉や態度に、どうしようもなく揺さぶられる。
遥か昔に閉じ込めた初恋の記憶を、揺り起こすかのようだった。