蜜月同棲~24時間独占されています~

恋は落ちるもの

***********


オムレツは、実は綺麗に作るのが苦手なのだけれど、今日はふたつとも上手くいった。
焼いたベーコンも添えて、トマトとゆでたブロッコリーも乗せる。


後は、トースターで温めているロールパンを待つだけ。
よし、と菜箸を流しに置いたとき、ふわっと真後ろから抱きすくめられた。


「ひやっ!」

「おはよう柚香。良い匂い」


私の間抜けな悲鳴など意に介せずお腹に両手を回し、後ろからオムレツの皿を覗き込む。


「もう、克己くん! びっくりするから後ろから気配させずに近づくの止めてってば!」

「別に消してないけどな。柚香が鈍いんじゃない?」


くすくす笑う克己くんは、まだ私を解放してはくれない。
あのお見合いの日から、克己くんはこうして接近して私を揶揄うことが多くなった。


料理していれば後ろから邪魔して来たり、突然額や頬にキスされたり、最初はどぎまぎする一方だった私もちょっと、慣れてきた。


というのも、決してそれ以上はしてこない、という安心感もあるからだ。


私が慌てれば慌てるほど、面白がってするのだろう、と思ったので出来るだけ平静を装うようにしている。


「克己くん、起きたなら運んで。私はパンを持っていくから」


そう言ったタイミングでちょうど、トースターが「ちん」と鳴った。
ようやく克己くんの腕が解ける。そして油断した。


「了解。オムレツ持っていく」


そう言って、突然ちゅっと耳の近くを啄まれた。



< 99 / 200 >

この作品をシェア

pagetop