ウサギな君へ
アキラくんが韓国に行っちゃうまであと1ヶ月。
「ねーアキラくん、私バイトすることにしたの。」

「えー、別にお金に困ってないんだししなくてもいいんじゃない?」

「うーん、でもねアヤノに誘われちゃってさ。アキラくんがいなくなったら退屈だし、その間に結婚資金でも貯めておこうかなって。可愛いお店だよ。私一回ウエイトレスしてみたかったんだぁ。」

嘘も何もない。
純粋にその通り、そのままだった。


「へぇー、あの大学の前のパスタ屋さんかぁ。あそこの店可愛い子多いし評判いいもんね。うん、やってみなよ。嫌だったらすぐやめればいいんだし。」


私は可愛いものに憧れる癖がある。
可愛い子が多い店で働けば自分の価値も上がると思ってた。
私は自分のポテンシャルを上げるためにいつも計算して生きてきた。
新しい環境にワクワクしながらも、どこかで何か新しい刺激を求めていたのかもしれない。

アキラくんがいなくなることの寂しい気持ちに嘘はない。
でもそれじゃ生きてられないんだ。
昔見た「紅い月」という映画で、旦那さんが死んでしまい、他の男の人とセックスしてるとこを自分の子供に見られた女性が、「生きるために必要なのよ!」と言ってたシーンがあったが、だんだんとその意味がわかるようになってきた。


アキラくんと離れるまであと1ヶ月。
私はどこかで寂しがり屋病に効く薬を求めて準備を始めていたのかもしれない。
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