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1、青天の霹靂
ただの自惚れかもしれない。
だけど、例えそうだとしてもそれでもいい。
これだけがわたしの生涯の中で唯一の誉かもしれない。
この世界で、ハルの才能に誰よりも最初に気付いたのは——”わたし”だと思うから。
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わたしの一つ上の学年には、この学園の名物コンビとモテはやされる先輩がいた。
そういう事に、全く興味のなかったわたしでさえも知っている位だから、その人気っぷりは相当なものだと思う。
それが”ハル先輩”と”アキ先輩”だった。
いつだって女子の間で交わされる会話は、専ら彼らの事で持ちきりだ。
一方わたしと言えば、幽霊部員を多く抱えた名ばかりの軽音部に所属する、至って普通の高校二年生。
放課後は決まって部室にこもり、ドラムの練習に励んでいる。
部員の大半が幽霊部員にも関わらず、部室には機材等の設備が充実しているから不思議だ。
誰にも気を遣う事なく、好きなバンドの曲に合わせて気兼ねなく練習出来る所が、実は気に入っていたりする。