琥珀の奇蹟-MEN-
『仕方ないだろう?俺のミスで皆に迷惑かけてるんだし』
唐突に、どこからか白石の誰かを窘めるような声が聞こえてくる。相手の声が聞こえないことから、おおかた電話で話でもしているのだろう。
目の前のアスファルトには、エンジンをかけて温めているらしき営業車が一台。
近づいて中を確認するも、白石は乗っていないようだ。
『だから、ごめんって…』
またかすかに聞こえてきた声の先をたどると、数メートル先の大型車が停まっている屋根付き車庫の脇で、電話をかけている白石が見える。
おでこに拳を着けて、困ったように天を仰ぐ白石。
あまり聞かれたくはない会話だろうから車の中で待とうと、助手席のドアを開け、中に入ると、その音に気付いた白石が、早々に電話を切り上げて、運転席に乗り込んできた。
『お待たせして、すみません』
『いや…俺より、お前こそ大丈夫なのか?』
『え…あ、聞こえちゃいました?』
『少しだけな』
白石はシートベルトをすると、『出ますね』と一声かけてから、車をスタートさせる。
先ずは自社の工場がある川崎に向かうので、車は一旦、幹線道路を神奈川方面に向けて、走りだした。