琥珀の奇蹟-MEN-

『彼女なんです…さっきの電話の相手』

真っすぐ前を向いたまま、バツが悪そうに白石が話出す。

『今日会う約束してて、突然ドタキャンしたから、えらくご立腹で…』
『…だろうと思ったよ』
『主任は今日、約束無かったんですか?』
『俺もお前と一緒でドタキャンだ』
『え…主任も?』

ちょうど赤信号で止まったところで、驚いたようにこちらを振り返る。

『ちなみに予約してたスペイン料理もキャンセルした』

そこでハタと気づいたらしく、白石は慌てて『すみません!主任のは、全部俺のせいですね』と謝罪するも、『そこは気にしなくていいぞ』と、笑ってフォローする。

『仕事していれば、こういうことだってあるのは仕方ないさ』
『彼女さん、怒ってませんでした?』
『いや…内心は分からないが、特に怒ってはいなかったかな』
『さすが大人だなぁ』

感心する白石の横で、30分ほど前の柚希との電話の会話を思い起こすも、やっぱりそんなそぶりはなかった気がする。

聞けば交際半年の白石の彼女は、社会人1年目らしく、そういったことにまだ理解がなくても仕方ないのかもしれない。
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