琥珀の奇蹟-MEN-
ふいに目が合い、何故かドキリとして慌てて視線を逸らした。
『あなた、病院にどなたか、お知り合いでもいらっしゃるの?』
『いえ…病院ではなく、そこからすぐの場所に知人がおりまして…』
『ご友人?』
『恋人…です』
『まあ!クリスマスの夜に逢瀬ね…素敵だわ』
パッと夢見る少女のような笑みで、微笑む老女。
自分の祖母よりも年上であろうに、失礼ながらも思わず”可愛い”と思ってしまった。
偶然にも、老女が示した行き先の病院は、柚希の自宅から歩いて15分程の場所にある大きな総合病院。
今更ながらに、何かに導かれているような、そんな不思議な感覚に陥る。
『何だか運命を感じますねぇ…こんな日に、恋人に会いに行く男性と知り合えるなんて』
老女が少し悲しそうに微笑んだ。
”こんな日…に?”
雪の降るクリスマスに…という意味だろうか?それとも…。
ふいに沸いた疑問を素直に口に出してしまう。
『…病院って、この時間に、お見舞いですか?』
『ええ、主人のお見舞い…というより、お見送りかしら?…』
思わず、絶句してしまう。