琥珀の奇蹟-MEN-

咄嗟に時刻を確認する。

午後7時15分。

まずい…仕事に集中しすぎて、すっかり連絡し忘れるところだった。

今夜は恋人の柚希と、いつも待ち合わせに使っている店で合流し、近くのスペイン料理のレストランで食事をする手筈になっていた。

待ち合わせの時間から既に45分も過ぎている。

先ずは急いで、工場勤務だった同期に一本メールを打って席を立つと、近くにいたスタッフに、自分に連絡があったら呼んでくれと声をかけてから、執務室を出る。

廊下に出ると、さっきはコートを着ていたからそこまで感じなかったが、向かい側の窓から冷たい冷気が入り、底冷えするほどの寒さ。

とりあえず、執務室のドアが見えるギリギリの位置まで移動しながら、急いで柚希に電話をかける。

『もしもし?』

5コール目で、電話が繋がった。
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