琥珀の奇蹟-MEN-
安心したのか、ずっと強張っていた身体が解かれたのが、触れている腕からも伝わってきた。
『…だったら嬉しいな…あ、でもね、ホントに気にしなくてもいいの。だって仕事だし、隆弘が、今大変なのも、ちゃんとわかってるから…』
分かってはいたが、自分の仕事を一番理解してくれている柚希の気持ちが聞けると同時に、不条理で矛盾した感情が、自分の中で沸いてくる。
見え隠れする、柚希の裏側の心。
俺が聞きたかったのは、そんな優等生の答えじゃない。
目の前にある、露出した首元は、湯に浸かったからかほんのり紅潮していて、吸い寄せられるように口づけると、軽く甘噛みする。
『…だから心配なんていらな…ンッ』
瞬間、柚希の甘い声。
咄嗟に出た、自分の声が恥ずかしかったのか、直ぐに俺が口づけた部分に手を添え、顔だけ後ろを振り返り、非難の目を向ける。
『ちょっ、何すんのよ』
『バカ…そこは、素直に会いたかったって言えよ…』
小柄な柚希の後ろで一旦姿勢を正し、強く抱きしめていた手を緩めると、もう一度…今度は優しく包むように、抱きしめ直す。