琥珀の奇蹟-MEN-
『何だよ』
『だって、明日、お互い仕事だよ?』
『そうだな』
『そうだなって…』
唖然とした柚希を前に、俺は背広を脱ぎ椅子にかけると、手際よく首元を緩め、ネクタイを外す。
『…泊ってくの?』
『ああ、さっきここに来るまでに、明日一旦自宅に戻ってから、直接取引先に直行する手筈は整えてきた』
『…そんなこと、できるの?』
『できるもなにも、まさかこのまま柚希を抱かずに帰れなんて、言わないよな?』
そう言いながら、また一歩近づき、柚希の頬に触れる。
『…嫌か?』
欲情していない…と言ったら嘘になる。
が、それ以上に、今この愛おしむ気持ちを柚希に伝える術が、他に見いだせなかったのも事実。
ありったけの感情を込めた目で、柚希を見つめた。
柚希は数秒間迷った後、黙ったままゆっくり首を振り、嫌じゃないという意志表示を示す。