琥珀の奇蹟-MEN-
正直ホッとした。
今までだってそうだが、柚希の気持ちを無視してまで、強引に事を進める気など無かったが、今日ばかりは、さすがに耐えられそうになかったから。
このほんの少し間、離れていただけで、もう柚希に触れたくなった俺は、早速とばかりに、手を伸ばし頬に触れ、顎をすくうように持ち上げ口づけをしようとすると、その唇をやんわり両手で押しのけられた。
『おい…何する?』
俺は、眉間に皺を寄せ、強く難色を示す。
『先ずは、お風呂で温まってきて、その冷たい手で触られたくない』
柚希にぴしゃりと言われた。
その言葉には力があり、照れや誤魔化しでは無く、明らかに彼女の本心なのだろう。
確かに、未だ氷のように冷たく、冷え切った俺の身体や手が、自分の素肌に触れるのならば、嫌に違いない。
ここは、こちらが折れるしか無さそうだ。
『わかった…風呂、借りるぞ』
渋々だが、一旦お預けを喰らい、柚希のお望み通り、風呂に入って温まることにする。
実際、言われてみれば、自身もこの冷え切った身体を芯から温めておきたかった。