琥珀の奇蹟-MEN-

見入るわけでもなくついているリビングのテレビでは、朝の情報番組が流れ、昨夜降った都心の雪に関して、交通機関の影響などを話している。

柚希が言ったように、この近辺の電車には大きな乱れもなく、別段影響はなさそうだった。

『…マスターがね、今度は二人で一緒に来なさいって』

何気なく両手でカップを包み込み、テレビを見たまま、話す柚希。

『そうだな』

柚希の淹れてくれたコーヒーを口にしながら、昨夜琥珀堂で飲まされた、苦い珈琲を思い出し、苦笑する。

…と、同時にマスターから聞いたあの話も思い出した。

『柚希』
『ん?』
『俺がいない時、琥珀堂で誰かに話しかけられたりしたことあるのか?』
『琥珀堂で?ん~店内では、別に無いかな…』

”店内では…”の言葉に、ぎくりとする。
< 65 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop