琥珀の奇蹟-MEN-
隣を見れば、よほど恥ずかしいのか、照れくさそうに下を向く柚希。
不意に、今更ながらに彼女の着ている見慣れないコートに気が付いた。
『柚希、そんなコート持ってたっけ?』
『あ、気が付いた?実はこの前、冬ボーでね、思い切って買っちゃった』
ベージュ色のひざ丈のコート、見るからに良いものであるとわかるそれは、色合いも形も柚希によく似合っていた。
『ダメ…だった?』
『いや、よく似合ってるよ』
『良かった…』
何故か大げさにホッとする柚希。
『?俺、柚希の着るもんに、何か言ったことあったっけ?』
『ううん違うの、ちょっとコレ高かったから…、って!別に良いよね!私が稼いだお金で買ったんだもん、何買ったって自由だし…』
何故か焦って、一人で弁明しだす柚希。
なるほど…そういうことか。
何となく柚希の考えていることが、わかるような気がした。
『気にしなくていいぞ』
『え?』
『実は俺もこの前、自分の金で、結構高い買い物したし』
俺は、鞄の中の四角い箱を思い浮かべながら、まっすぐ前を見たまま続ける。