俺様社長ときゅん甘同居
鬼のチーフデザイナー
私が働くデザイン事務所は、わりとこじんまりとしたデザイン事務所で、所長の他にはチーフデザイナーとその下に数名のデザイナーが居る、雑居ビルのワンフロアにある事務所だ。

そこで、経理と事務処理を一手に引き受けているのが私、伊藤晶子である。
大手の総合商社で経理事務として働いていたが、大手故に女子社員は早々に寿退社していくか、バリバリと産休育休を使って働く歳上の方々が多く、二十代後半でそこに残っていると段々と肩身が狭くなってきた。

そんな折、今の事務所の所長と結婚した友人が妊娠を機に家庭に入るため事務所の経理や事務をしてくれる人を探していると言うので、私は大手商社を退職してここに来た。

ここに来て5年。
事務の私は心穏やかに仕事が出来ている。
居心地の良さと仕事のしやすさで、すっかり私は仕事人間になっていた。

そんな、このデザイン事務所のチーフデザイナーは下の子たちから鬼上司と言われている。
仕事においては厳しく指導し、情け容赦なく出来の悪いデザインは切るからだ。
しかし、出来が良い時はかなり褒める。
飴と鞭の使い分けの上手い人だ。
そして、デザインの出来の善し悪しに厳しいのもうなずけるだけのデザインを仕上げてくる、デザイナーとしても優秀な人である。
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