俺様社長ときゅん甘同居
「わ、分かりましたから、少し離れて」
「嫌だ!あと敬語もやめろ?普通に話してみろよ」

次々に挙がる要求に、もうタジタジだ。
慣れないことを次々にさせられている。

「分かった!なるべく普通になるように話すから!ホントに少し離れて」

そう少し声のボリュームは抑え目だけど、語気は強めに言うと

「仕方ないな、じゃあ行こうか」

そう言ってかごを持たない手の方で私の手を取り繋いだ。
恋人繋ぎだ。
これも慣れない。
しかも指先で甲をするする撫でてる。

「拓さん!」

抗議の声は聞こえたはずなのに、クスクスと笑ってそのままの拓さん。

「ホントに、ずる賢い人」

ため息混じりに言えば

「こっちは必死だからな。策はいくらでも張ってて当然だろ?逃がさない為にこれでもかなり頑張ってんだよ」

ストレートな、飾り気のない言葉はそのままに私に届く。
このモテるタイプの男が、私に合わせて苦労している。

そう思った時に、私は急激に実感した。
この人は本気で私が欲しいのだと。
この人の本気に答えて捕まった時、それは私の人生の転機だろう。

うっすらとだが、その予感は何となく確信に近いものがあった。
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