白衣の聖人による愛深き教示

「愛結、顔がだらけてる」
「え?」

 先輩が呆れた声で指摘しても、自分がどんな顔をしているのかわからなかった。

「連絡取れるようにしてるんだったら、大丈夫ってことね」
「はい。土曜日、会うことになってます」
「なになに、いきなり惚気?」
「そういうわけじゃ!」

 いいっていいってと、にやにやしながら締め作業に取り掛かる先輩は私を祝福してくれる。
 本当にこれは夢じゃないのかと両頬を軽くぱちんと叩いてみた。
 夢でないことは痛みが教えてくれ、残る痺れに気が引き締まる。
 今は目の前の仕事をこなし、今夜帰宅してからは両親に紹介したい人がいるときちんと伝えなければいけない。

 土曜日、お見合いの予定時刻は、昼食も兼ねて12時になっている。
 久保泉先生と落ち合って、そのまま両親にも紹介できるいいタイミングだ。
 お見合い相手の方には申し訳ないけれど、せめてセッティングしてもらった食事会には顔を出し、そのあとにでも、今回は縁がなかったとお断りするのだ。
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