白衣の聖人による愛深き教示
一瞬静まり返る医務室。
どんな返事をもらおうとも、しっかり受け止めようと思って気張って来た心は、降りる沈黙に早くも音を上げてしまいそうだ。
入社したときから、ううん、入社前の新入社員の健康診断のときから、3年間大切に大切に育ててきた恋心。
ライバルが多いのは、出会った瞬間から思い知っていた。
同期の女の子達は一同に、彼の魅力についてを語り合っていたから。
入社してからも、女子の視線を一手に引き受けていた彼は、ただただ見つめるだけの遠い存在だった。
それなのに……
「ええ、いいですよ」
見るのも怖くて上げられなかった頭の向こうで、手に持っていた袋がすっと私から抜き取られた。
はっとして顔を上げた先では、聖人君子のような優しい微笑みを携えた久保泉先生が、私が持ってきたチョコレートの紙袋を手にしていた。