それでも、幸運の女神は微笑む
ムッシェさんが何やら聞いてくる。

この流れで聞いてくることと言えば美味しいかどうかだよね!ってーことはー!



「おいちぃくぁい」


あれっ!?ムッシェさんが菩薩のような笑みを浮かべている!?



「美味しい、だよ」

「おいちーだお?」

「美味しい」

「おしい!」

「うん、惜しいなぁ」

「ひょ?」



なんか間違え続けてる気がする・・・。

気のせいじゃない気がする・・・。


異世界言語難しい・・・と痛感していると。

コンコンとノックの音がした。


ムッシェさんが何やら答えると、ドアが開いて、黒い詰襟の軍服のようなものを着た、細身の少年が入ってきた。


ふわふわの青白い髪。
猫みたいな目は、左が赤く右が紫。
端正な顔立ちのその人は、私をじいっと見た。

かすかに首を傾げて、薄く形のいい唇を開く。


『#%+**#%?』




その、声は。


意識がなくなる寸前に、聞いた・・・



『もしかして、助けてくれまし、いたたたたっ!』


思わず前のめりになって、左肩を痛めた。

慌ててムッシェさんが宥めるように撫で擦ってくれる。

すみませんムッシェさん。私が阿呆なばかりに・・・。



痛みが治まって、やっとこ少年の方に目を向ければ・・・

『あれっ?』



少年はいなくなっていた。





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