それでも、幸運の女神は微笑む
私が微妙に落ち込んでいると、ラギアがアイナに何か話して、アイナが首を振る。

そうして、にっこり笑った。


「このまま牢から出すことはできませんわ」

「無実でも?」

「無実だという証拠はどこにもなく、状況的に見れば限りなく怪しいのではなくて?」

「うん」

「・・・あっさり頷きますのね。
ですから、自白薬を飲んでもらいますわ」

「自白薬?」

「効かなければ拷問ですわ」

「ふうん・・・できるだけ薄くしてあげて」

「なぜ?」

「慣れてないだろうから。
壊れてしまっては困るでしょ?」

「そうですわね。わかりましたわ」




何やら頷いたアイナは、頭にクエスチョンマークを浮かべている私に微笑んだ。

そしてお仕着せの紺色のワンピースの腰辺りから、透明な液体の入った小さな瓶を取り出した。

とろりと、液体が瓶の中で揺れる。



「アイナ」

「わかっておりますわよ。水はこちらに」


もう一度手をお仕着せの腰辺りに潜らせ、透明な液体が入った少し大きめ瓶を取り出す。

こちらはたぷんと揺れる。水っぽい?



「ラギア、少々手伝ってくださいませ」

「うん」


ラギアが大きめな方の瓶を持ち、蓋を開けた。

アイナがそれにとろりとしら液体を1、2・・・5滴入れる。




「これでよろしいかしら?」

「うん」


何かアイナが聞き、ラギアが頷いた。

アイナはラギアが頷いたのを見て、とろりとした液体の瓶の蓋を閉めて、また瓶をお仕着せの腰辺りに戻した。


そして、ラギアの手から大きめの瓶を取って、牢の下の方の小さな一部分を開いてこちらに瓶を入れた。

再びその一部分が閉じられ、アイナは私をひたと見据え、有無を言わさぬ声で言う。



「アサヒ、お飲みなさい」

〈飲んで〉


ラギアが伝えた言葉に頷いた。

なんだかちょっと怪しいけれど、拒否権はないのだろう。


私は瓶を取って、コクリと一口飲んだ。





< 111 / 153 >

この作品をシェア

pagetop