それでも、幸運の女神は微笑む
甘ったるい液体が、喉を通り過ぎて。

だんだん、頭がぼうっとしてきた。


ぽわぽわした頭は、難しいことは考えられなくて。




〈アサヒ〉


ぼんやりと霞む視界では、金色の瞳が眩しかった。

アイナが何か言っている。頷いて、ラギアが言う。



〈アサヒは今日の魔猪について何か知ってる?〉

『まい?まいって、まい?』


ぽわぽわした頭に、バスケの上手いボブカットのクラスメートの姿が浮かぶ。

舞がいるだけで体育のバスケのミニゲームは大きく勝ちに傾いた。

どうしてるかなぁ。バスケ以外でもめちゃめちゃ頼りになる副委員長。


会いたいなぁ。

だけどその思いも、霞んでいく。


ぽやぽや、ぽやぽや。

靄がかかっているような頭の中では、何もかもが色褪せる。



〈アサヒはユウヒの目的を知っている?〉

『しらない』

〈ユウヒはどこに逃げた?〉

『しらない』

〈ユウヒはなんでアサヒに口付けた?〉

『しらない』

〈アサヒは何をしようとしてる?〉

『かえる』



ぽやぽやした頭で、機械的に質問に返す。

だけど、確かその答えは大事なものだったはず。


絶対しなきゃいけないの。



『わたしのせかいにかえる』

〈・・・そう〉



静かに頷いて、金の瞳は私から逸らされた。





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