それでも、幸運の女神は微笑む
通訳してもらった言葉に、すとんと力が抜けた。


信じてもらえた。

私が何も知らない異世界の人間だと。



それに、すごくほっとした。


『私、もう、牢に入らなくてもいい?』

〈うん〉

『私、もう・・・疑われない?』

〈うん。アサヒ、大丈夫だよ〉



静かな肯定に、私は滲みそうになる涙をこらえて、口元を緩ませた。




『よか、った・・・』


あの冷たい牢に、もう入らなくていい。

あんな不安な時間が、もうこない。



「ありがとう、ラギア、アイナ」


緩んだ顔のまま告げれば、顔を上げたアイナがくしゃりと口元を歪めた。




「・・・して」

「ひょ?」

「どうしてですの?」


綺麗なコバルトブルーの瞳が、ゆらりと揺れる。



「どうして、感謝するんですの?
どうして、笑うんですの?
貴女は、怒って然るべきですのに!!!」

「ひょ!?すみません!?」


何を言っているかわからないまま、凄まじい剣幕に押されるようにして謝罪を述べた。

ら、ギロッと睨まれた。

アイナの可憐な見た目に似合わない凄みのある睨みにビビる。


誰だアイナ14歳だとか言ったの。

こんな貫禄ある14歳がいてたまるか!



混乱する私に、ラギアの意思が頭に響いた。


〈アイナは、アサヒがなんで笑顔で感謝するのはなぜかって聞いてる。アサヒは怒って当然なのにって〉



ありがとうラギア!

って、アイナはあの剣幕でそんなことを言っていたのか・・・。




『怒ってないわけではないんだけど・・・見えない?』

「・・・アサヒ、怒ってないわけじゃないんだって」

「その表情でですか!?」


あ、見えないっぽい。

アイナが愕然とした顔をしてる。





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