それでも、幸運の女神は微笑む
夕日がしたことを知ったのは、アイナとラギアが私に謝った次の日だった。


白い寝台に横たわるガペラさんは、青白い顔をしていた。


黒毛に赤目の猪のような動物に襲われて、彼女は片足を失った。


猪のような動物・・・魔猪を誘き寄せる薬を雑巾に含ませてばら撒いたのが夕日らしいと、そう聞いた。

そうして何匹もの魔猪が砦に入ってきて、多数の怪我人を出した。

すぐに騎士達が応戦した為死者は出なかったけど、出てもおかしくはなかった。



ガペラさんは、もっとも重い怪我人だった。

片足はもう戻らない。







–––そしてあれから一か月ほどたった。

それまでなんの接触もなかったのに、今更でしょう?



夕日。

あなたの笑顔を思い出すよ。
あなたの日本語を思い出すよ。


会いたいよ。

あなたのことが知りたいよ。





でも、また会うのなら、夕日自身の脚で会いに来てほしい。

じゃないと、ズルいよ。








「ラギア」

「ん?」

「おるー見る?」

「・・・ああ。
うん、オルー、見えてきた」



なんとなく無言でいたけれど、私は切り替えるように溌剌とラギアに聞いた。

私の言語能力のせいか一瞬きょとんとした後、ラギアはうんと頷いてくれた。





屋根の角度が急な家々が見えて来ていた。

渋い青色の屋根が鋭利な角を空に向けていた。


私は、町へ入るためにあるらしい門へと、歩いていた斜面を駆け下りていった。


手をつないでいるために引っ張られたラギアが、珍しく・・・というか初めて?声を張った。




「アサヒ!」

『あははははっ!』


駆けているうちに楽しくなって笑った私は、次の瞬間、こけそうになって、ラギアに助けられた。

ラギアごめん!!!






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