それでも、幸運の女神は微笑む
人通りのほとんどない寂れた町。

重くなる税金。



・・・私は、きっと、本当に何も知らないんだろう。


この世界のことも、この国のことも。

あの、生活している砦のことでさえ。





だって未だにわからない。


なんで砦に、やんごとない雰囲気をバシバシ出す、幼さの残るアイナがいるのか。

なんで砦のメイド達を、明らかに1番年下のムムが仕切るのか。

なんでエリィさんは女装をしていて、時折怒鳴り声が聴こえてくるのか。

なんで時折、ロイとロッチェが飢えた獣のような目をするのか。

なんでムッシェさんは、私の獣の傷が異常に早く治ったとき、目に狂気を宿したのか。

なんでボルダさんは、いつもふわふわ笑っているのに、時々氷のような目になるのか。

なんで最近、砦の中がピリピリしているのか。






わからない。
知らない。


それでいいのかと思うと同時に、そうでなくてはとも思う。




こんなに良くしてもらっているのに、一緒に暮らしているのに、それでいいの?

必ず私の世界に帰るのに、この世界を知って肩入れなんかしない、そうでなくては。



––––ああ、だけど、今は。





「ラギア」

「ん?」



呼びかければ、綺麗な紫の瞳が私を見る。

私は、にーっと笑った。




「美味しい、はっけーん、する!」


お腹が空いたね!!





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