それでも、幸運の女神は微笑む
「お昼がまだでしたか。
おすすめの露店をご案内いたしましょうか?」

「みょ?」

「ボルダが好きなところに行く?」

「ヴぉお!いく!」


ボルダさんの好きなお店!

気になる!



「ボルダ、たのむ!」

「はい。了解いたしました」



にこやかに頷いたボルダさんに先導されて、私たちは歩き出した。





「ですが『頼む』は、男言葉ですねぇ」

「ひょ?」

「休憩中の騎士や兵士と時々話してるから、それで覚えたんだと思う」

「なるほど。
この一か月で随分と馴染みましたね」

「ひょー?」



騎士、兵士、話す・・・?

一か月で、なに?


うーん。

やっぱり異世界言語難しい。まだまだ覚えてない単語はいっぱいあるみたいだし。






「アサヒ」

「ひょ?」

「アサヒはもうたくさんの人と話せるねってこと」


ラギアの声はいつもと同じ淡々としたものだけど、紫の瞳は優しい光を宿しているようで。


「うん!うれしい!」



心がぽわっとしたと同時にそわそわした。

嬉しいんだけど、なんでかちょっと気恥しいような。


誤魔化すように、繋いでいる手をぶんぶん振った。





「・・・本当に、仲がよろしいようで」



呟くように言ったボルダさんは、眩しそうに目を細めていた。

不思議に思って首を傾げると、ふわりとほほ笑んだ。



「もうすぐ、着きますよ」

「うん!」

「わかった」




賑やかな活気の中で、私は笑った。





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