それでも、幸運の女神は微笑む
–––ボルダさんが好きな露店は、美味しそうな匂いが漂っていた。

お肉の串焼きを、レタスっぽい葉野菜と一緒にパンに挟んだものを売っている。


じゅうじゅうとお肉の焼ける香ばしい匂いがたまんない!



「食べるしたい!食べるしたい!」

美味しそう美味しそう美味しそう!

「大興奮ですね」

「アサヒ、落ち着いて」

「おや、嬢ちゃん随分嬉しい反応してくれるじゃねぇか!」


どうどうとラギアに宥められて落ち着いた私は、快活に笑う店主らしきおじさんを見た。


赤茶色の短髪に赤茶色の三白眼。
頰には大きな傷跡。

・・・あれ。ヤのつく人ですか?


え?おじさんこわっ!おじさんこわぁ!



しかーし!

私はそんなことでは怯まない!


兵士の皆様のガラの悪さハンパないから!
鍛えられてんだこっちは!!



私はぐっとおじさんの顔を見て・・・



「それ、ほし」ぐーきゅるるるる。






沈黙がこの一角を支配した。





ちょっとは我慢しようか私の腹の虫?

なだめるようにお腹をさすっていると、ぶはっと噴き出す声が聞こえた。


見れば、あれヤのつく人ですか?って顔が楽しそうに緩んでいた。

めっちゃ怖いです兄貴!って雰囲気が、ちょっと強面の近所のおじさんぐらいにはなっている。



「そんな腹減ってんのか嬢ちゃん!
さっきのテンションはそのせいか?」

「ひょ?はらへってる!」

「そうかそうか。それで、うちのメシ食いにきたってわけか」

「うん!食べる、きた!ひとつ、ほしい!」

「はいよ。25シアだ」


えーっと・・・10が「10」で20が「20」、あと、「1、2、3、4、5」・・・「5」。

だから25シア。


巾着から10シア硬貨と1シア硬貨5枚をちまちま出して、渡す。

おじさんは強面をにかっとほころばせて、お肉を挟んだパンをひとつ渡してくれた




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