それでも、幸運の女神は微笑む
「名前さえ正確に言えないのに、どうしてでしゃばるの?
旭がそっちにいるのは“たまたま”君の方と会ったのが早かったってだけでしょ?」

「・・・・・・」

「“神の恩恵”を使わなくては意思疎通さえ満足に出来ないくせに、邪魔する資格あるの?」



サラサラと紡がれる声はひどく穏やかだった。

だけど、普通の会話の速度で紡がれる言葉はわからない単語も多くて、イマイチ意味がわからない。


だけど、穏やかな夕日の声にラギアが何も返さないのが不自然で、変だと思った。




『夕日!日本語訳を要求する!』

『えぇー!面倒臭い・・・』

『じゃあせめて簡単な単語を使って!
「でしゃばるの」って何!?』

『でしゃばる、だよ。
何が簡単か、それが難しくない?』


ぶつぶつと夕日が続けたけど、私はぽかんとしてしまった。

でしゃばる?

ってことは・・・
「名前、正しい、言えない、なぜ、でしゃばる?」ってこと?




は、

『はああああああああ!?』

「わっ!?」

「!?」


突如叫んだ私に、夕日とラギアがビクッとなった。

が、気にしている場合じゃない!



『でしゃばるって何でしゃばるって!!
夕日、あんた私に喧嘩売ってる?そうなら買うけど!?』

『売ってない売ってない!旭にはまるで売ってない!』


ビックリしたラギアの隙をついて手を振りほどき、ガッ!と夕日の襟首引っ掴んで揺さぶった。

揺さぶられながらもぶんぶんと首と両手を振る夕日にちょっと溜飲を下げて、揺さぶるのをやめた。

襟首は掴んだままだけど。




< 149 / 153 >

この作品をシェア

pagetop