それでも、幸運の女神は微笑む
私は首を振った。

地図の様々な場所を指差し首を傾げる美少女になんだか申し訳なく思う。



この地図のどの場所を指差したとしても私が首を縦に振ることなどありえないのだから。




私のいた場所は、きっとこの世界のどこにもない。





段々と美少女の顔が険しくなっていく。

私たちを見ていたムッシェさんの顔も同様だ。



そうしてついに、美少女がキッと私を睨んだ。


「あなた!」


儚げな見た目を裏切る凛とした鋭い声に、思わず肩が揺れる。



「いい加減になさい!わたくしをおちょくってますの?!」


怒りに満ちた大きな声。

言葉はわからないけど、馬鹿にするなというようなことを言っているんだろうことは想像できたし、怒っていることは十分すぎるほどわかった。



それでも、私にはどうしようもないのだ。


馬鹿にしているわけじゃない。

嘘をついているわけでもない。



私のいた場所が、その地図にあればよかった。

その地図が、私の見慣れた世界地図であればよかった。




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