それでも、幸運の女神は微笑む

「アサヒ、とお呼びしても構いませんか?」

***



アイナと話して、めちゃくちゃ発音を直されて、少しうとうとして・・・気が付いたら寝てたみたいだ。

起きたら、日は沈んでしまったようで、薄暗い室内でムッシェさんが椅子に座って蝋燭の微かな火を頼りに何か書いていた。

羊皮紙に羽ペン。まるで中世のヨーロッパの方たちが使う筆記用具。


真剣な顔のムッシェさんをぼーっと見ていると、ぐううううううっと私のお腹が鳴った。

けっこう、大きな音だった。



お腹を抱えて顔を赤くしていると、ムッシェさんが笑ってドアを指差した。

行こうってことだ。たぶん、何か食べるために。




うんと頷いて、そっと寝台から降りる。

ムッシェさんの後に続いて、初めてこの部屋の外に出た。




廊下も部屋と同じく石でできた冷たい感じがする壁に囲まれている。

ムッシェさんが蝋燭を燭台に乗せて持ってきてくれたから、薄暗いながらも足元は見えた。


ムッシェさんは一本道である廊下を歩いていく。

ムッシェさんは顔はおじいちゃんっぽいけど、筋肉もりもりで2メートル近い大きな体をしていてかなりピンシャンしてる。

大きな体に見合う脚は長くて、私は小走りでちょこまかと後ろをついていく始末だ。


ムッシェさん歩くの速いですね!私地味に息が切れてきました!

・・・若さって、何だろう。




< 19 / 153 >

この作品をシェア

pagetop