それでも、幸運の女神は微笑む
『いただきます』


そう言って食べ始めた料理は、素朴だけど温かみがあって、美味しかった。


味付けは塩と胡椒だけのシンプルなスープは、鶏肉と野菜の旨味がじわっと感じられた。

黒味の強いパンはけっこう堅かったけど、小麦の味が香ばしくって。

ムッシェさんを真似てパンをスープに浸せば、パンが柔らかくなって食べやすくなった。



「美味しいか?アサヒ」

「おいっ、つい!」

「美味しい」

「おいつい」

「し」

「つ」

「し」

「ん?つぃーいー・・・すい・・・し?」


にっこりとムッシェさんは笑って繰り返してくれた。



「美味しい」

「おいしい」

「よかったな」

「びゃん!」

「・・・・・・返事はどうにかならないのか」

「ひょ?」


首を傾げつつパクパクとパン、スープ、パン・・・と食べつつ返事のレッスン。


「うん」

「びゅん」

「うん」

「じゃー」

「うん!」

「ううん!」

「惜しい!・・・いや、惜しくない!それだと反対の意味だ!」



異世界言語マスターへの道は遠い・・・。



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